大阪大学卒/塾講師歴5年/家庭教師歴6年/E判定から阪大に合格できた経験を元に開発した独自の勉強法を教えた生徒は「たった2週間で苦手教科が27→73点」「定期テストで5教科合計200点以上アップ」「E判定から3ヶ月で志望校への逆転合格」など、劇的な成績アップを多数達成
高校受験の直前期に志望校を変更すべきか?元塾講師が解説【諦めるべきか悩む人へ】
受験直前期。多くの中学生やその保護者が「志望校を変更して、より安全校(レベルを落とした学校)を受験するべきかどうか」で悩まれる時期だと思います。
生徒本人としては「行きたい学校に挑戦したい」という気持ちがある一方で、「今の成績では厳しいのではないか」「不合格になったらどうしよう」という不安も大きい。
保護者の方からすれば、「万が一のことを考えると、安全策も必要ではないか」「でも子どもが後悔しない進路を選ばせたい」と、現実的な選択と子どもの夢のはざまで揺れ動くことも多いでしょう。
今回は、私自身がこれまで塾講師として多くの中学生と保護者の方をサポートしてきた経験をもとに、志望校を直前期に変更すべきかどうかの考え方について、詳しくお伝えしたいと思います。
大切なテーマなので、しっかりと解説します。長文になりますが、後悔のない決断のために、ぜひ参考にしてください!
1.「合格可能性」をどう捉えるか
まず直前期になると、多くの塾や学校の先生から「今の偏差値では合格可能性が低い」「安全校も視野に入れよう」という言葉を耳にするケースが増えます。もちろん、数値的な客観データは大切です。たとえば模擬試験の判定、校内実力テストや定期テストの結果などから、「合格圏内かどうか」をある程度把握することは必要でしょう。
しかし、その「合格可能性」というのは、あくまで“統計的な目安”であることも忘れてはなりません。模試の判定がE判定だからといって、必ず不合格になるわけではありません。逆にA判定でも油断して失敗する生徒もいます。合否の分かれ目には、直前期の追い込みやメンタル、当日の体調や問題の相性などさまざまな要素が作用するのです。だからこそ、「判定が悪いから無理」と切り捨てるのは早計だといえます。
とはいえ、その「さまざまな要素」を自分自身で本気でコントロールする覚悟がなければ、やはり安全策を取るのも一つの選択になります。自分にはあとどれだけの伸びしろがあって、あと何をどれくらいやれば合格可能性を高められるのか、その道筋を具体的にイメージできるなら、ラストスパートで結果を大きく変えることも可能です。
ですから、合格可能性は「今の成績から見た絶対評価」ではなく、「最後の最後まであがく可能性を含めた相対評価」として判断するべきです。
2.「不合格のリスク」と「チャレンジの価値」の天秤
直前期に志望校を諦めるかどうかを検討するとき、「不合格になったときのリスク」にばかり意識が向きがちです。不合格になった場合、滑り止めで入る高校で満足できるだろうか、周りとの比較で劣等感を感じないだろうか……といった不安が渦巻きます。
ただ、私が強調したいのは「チャレンジそのものの価値」もきちんと天秤にかけるべきだということです。たとえ不合格となったとしても、ぎりぎりまで本気で挑んだ経験は、必ずその後の人生の糧になります。生徒自身の自己効力感を高める大きなきっかけになることも多いのです。特に中学生の段階で、「自分はこの目標に対してどこまで頑張れるのか」を試す経験は、将来どんな仕事や勉強をするにあたっても大きなプラスになります。逆に早々に安全策を選び、「やりきらなかった」という後悔を抱えたまま高校に進学すると、その後のモチベーションに影響が出てしまう場合もあります。
もちろん、不合格になってしまった場合はショックもありますし、いわゆる「第二志望」の高校で進学することになるかもしれません。しかし、全力で挑んだ末の不合格であれば、その後の立ち直りも意外と早いことが多いのです。むしろ「自分はあれだけやったんだ」という自信があれば、次のステージで必ず飛躍できるはずです。
3.「どうしても入りたい理由」を再確認する
チャレンジの価値について考える上で、もう一つ大切なのが「そもそも、その志望校に行きたい理由は何なのか」という再確認です。「偏差値が高いから」とか「周囲が推薦してくるから」という動機だけでは、いざ厳しい勉強やつらい場面に直面したときにパワーを発揮しきれないことが多いのです。
「自分が将来こんなことをやりたいから、この学校の●●コースに入りたい」「自分に合う部活や学校の校風がある」「中学の先輩が通っていて憧れがある」など、心から「どうしても入りたい理由」があるなら、その気持ちこそが直前期の強力な原動力になります。逆に、その理由があいまいだと、「リスクを冒してまで挑戦するメリットはあるのだろうか」という迷いに飲み込まれやすくなります。
ここで重要なのは、「憧れ」という感情の大切さです。偏差値や指標だけでは語れないワクワク感や高揚感があると、人は想像以上に力を発揮します。実際、成績が足りなかった生徒でも、「どうしてもそこに行きたい!」という強い思いを持った子ほど、直前期に一気に伸びて合格を手にするケースを何度も目にしてきました。自分のなかにある「どうしても入りたい理由」が、まだ埋もれていないか、改めて見つめ直してみてください。
4.レベルを落とすことで得られるメリットとデメリット
「やはり合格は大切」と考え、あえてレベルを落とした学校を受験する判断をする場合ももちろんあります。ここでは、安全校を選ぶメリットとデメリットを整理してみましょう。
安全校を選ぶメリット
- 合格の安心感
不合格という結果を避けやすくなることで、心理的に余裕を持って残りの受験勉強に打ち込めるかもしれません。メンタルが安定していると、集中力や学習効率が上がることも考えられます。 - 高校での上位ポジション確保
自分の実力より少し低めの学校に進学すると、高校で上位クラスになれる可能性が高まります。上位にいることで、推薦や大学受験の際に有利になる可能性も出てきますし、学習意欲が高まりやすい面もあるでしょう。 - 目先の不安を減らせる
本番のプレッシャーに弱い場合、安全校を本命にすれば試験当日の緊張感が若干和らぎ、「絶対に失敗できない」という恐怖感が軽減されることもあります。
安全校を選ぶデメリット
- 後悔や物足りなさ
「もう少し頑張れたかもしれないのに」「挑戦していれば合格できたかもしれない」という思いが残ってしまうと、高校入学後にモチベーションを落とす原因になりえます。 - 成長機会の損失
やや背伸びした目標に挑戦して得られる“成長”のチャンスを逃してしまうことがあります。高い目標に向けてラストスパートをすることで培われる粘り強さや踏ん張りは、その後の学習や人生にも役立つ大きな財産です。 - セルフイメージの縮小
「結局、自分は逃げたんだ」と思ってしまうと、自信を失うきっかけになり、自分自身の可能性を狭めてしまう恐れもあります。
このようなメリットとデメリットも踏まえて、どちらのほうが魅力的に感じるか。自分自身(お子様自身)へ問いかけてみてください。
大切なのは、メリットもデメリットも両方があるということです。つまり、どちらを選んでも間違いではありません。どちらのほうが好きなのか。どちらが自分らしい選択なのか。どちらを選んでも正解なので、「自分にとってのベスト」を選ぶことが大切です。
5.「勝算を高める戦略」があるかどうか
直前期に志望校をあきらめるかどうかを検討するときに、私が一番注目してほしいのは「合格を掴み取るための、具体的で現実的な戦略を持っているかどうか」という点です。漠然と「まだ頑張れば伸びるかも」「ギリギリ間に合うかな」という気持ちだけで突き進むのは危険です。一方で、「ここからの1か月で主要3科目を重点的に攻略し、過去問演習を週●回こなし、苦手単元の克服にフォーカスする」というように、自分の弱点と向き合ったうえで緻密な学習計画を立て、それを実践する意志と行動力があるなら、合格可能性は大きく変わります。
ここで大切なのは、自分が今「どこに一番弱点があるのか」「どこを伸ばせば合格への可能性が一番高くなるのか」を明確に把握すること。そのうえで、時間を優先的に配分し、勉強の質を徹底的に高めることが必要です。
- 過去問を解いて、傾向を把握しつつ苦手分野を洗い出す
- 塾の先生や学校の先生に的確なアドバイスを求める
- 短期間で伸ばせる教科や単元に集中し、最低限の得点を死守する分野を把握する
こうした「やるべきこと」を明確にし、それをやり切れる見通しがあれば、直前期の偏差値はあまり当てになりません。むしろ「ここが足りないからここを補う」「この問題は頻出だから重点対策をする」といったピンポイント学習をすることで、短期的に偏差値を5~10ほど引き上げることは十分にあり得ます。
6.決断と覚悟
最終的には、「どんな決断をするにせよ、覚悟をきちんと持つこと」が大切です。志望校へのチャレンジを貫くなら、「直前期に徹底的に勉強する覚悟」「万が一不合格になっても後悔せずに次のステップへ進む覚悟」が必要です。一方で、レベルを落とすと決断したなら、「全力でその高校での学びや生活を楽しむ覚悟」「上位合格を目指してスタートダッシュを切り、大学受験など次の目標に備える覚悟」が必要になります。
どちらの選択が正しいかは、人それぞれの価値観や性格、志望校への思いの強さなどによって変わります。軽々しく「あなたはチャレンジすべきだ」「いや、安全策を取るべきだ」と決められるものではありません。大切なのは、「自分(あるいは自分の子ども)はどんな選択をしたら納得できるか」という視点を失わないことです。
7.それでも挑戦したい人へ【“やり抜いた先”をイメージする】
私は個人的な経験から、「もし迷うほど志望校への想いが強いなら、最終的には挑戦を選んでほしい」という気持ちを持っています。結果がどうであれ、“やり抜いた先”に見える景色は、想像以上に明るいものになるからです。
不合格だったとしても、その悔しさをバネに高校で大きくリベンジする生徒もいますし、逆に合格できた場合は自信を大きく育むことができます。「あのとき、あきらめずに頑張ってよかった」という体験は、人生を通じて大切な糧になります。人は、「自分はやればできる」という自己効力感を、挑戦と失敗、そして成功体験の積み重ねの中で養っていきます。
8.保護者の皆さまへ【子どもの主体性を引き出す関わり方】
保護者の方にとっても、とても悩ましい選択です。子どもの夢を応援したい反面、結果が伴わなかったときの不安や責任も感じることでしょう。
ここで意識したいのは、「最終的な決断はあくまでお子さん自身が納得して行う」というスタンスです。もちろん、中学生という年齢ですから、ある程度の助言や情報提供、選択肢を整理してあげるサポートは必要です。しかし、最終的に「自分の進路を自分で決めた」という感覚を持たせることが、長い目で見てお子さんの自立心や学習意欲を高めることにつながります。
「もしあの学校に落ちたらどうするの?」という問いかけではなく、「もし落ちたとしても、あれだけ頑張った経験は絶対に無駄にならないし、次の目標にきっと活きるよ」というポジティブな見通しを示してあげる姿勢が重要です。子どもは親の不安を敏感に察知しますから、「できれば安全策を取ってほしいな」「落ちたらどうしよう」という空気が伝わると、子ども自身もチャレンジする気持ちをくじかれやすくなります。
まとめ:「今の自分」に嘘をつかない選択を!
直前期に志望校を諦めるかどうかは、本当に悩ましいテーマです。
学力的な安全策や不合格のリスクは現実として存在します。それでも、「どうしても挑戦したい」「あと少しでも頑張りたい」という強い気持ちがあるなら、私は最後まで挑戦することをおすすめしたいです。もちろん結果はどう転ぶかわかりませんが、それこそが受験の醍醐味でもあり、人生において大きな学びを得るチャンスでもあります。
一方、「そこまで強い意志もないし、万全に合格を勝ち取りたい」という思いが強いなら、レベルを少し下げて安定合格を目指すのも立派な戦略です。大切なのは、「どちらを選んだとしても、納得できるように準備し、覚悟を持って進むこと」です。曖昧な気持ちでどっちつかずになってしまうと、不安ばかりが募り、学習効率も下がります。
「自分はどうしたいのか」「どういう未来を望むのか」と、正面から向き合って決めた道なら、どの高校へ進学してもきっと素晴らしい学校生活を送れますし、大学受験やその先の人生も充実したものになるはずです。最後まであきらめずにやり切る道も、確実に合格を狙う道も、どちらも正解です。どうか、今のあなたやお子さんが“納得のいく道”を見つけ、その道を堂々と選択してほしいと心から願っています。
受験は通過点ではありますが、この時期の経験や決断は、大人になってからふと振り返ったときに、「あのとき、あれだけ頑張れたんだ」という大きな自信になることが多いです。ぜひ、最終的にどの高校に進むとしても、「自分の限界に挑戦した」「本気で悩んで決めた」と胸を張れるような決断をしてみてください。応援しています。