大阪大学卒/塾講師歴5年/家庭教師歴6年/E判定から阪大に合格できた経験を元に開発した独自の勉強法を教えた生徒は「たった2週間で苦手教科が27→73点」「定期テストで5教科合計200点以上アップ」「E判定から3ヶ月で志望校への逆転合格」など、劇的な成績アップを多数達成
【無機化学】実験室的製法と工業的製法の面白さを解説する
こんにちは、NAOです。
理系化学を学んだ人なら「実験室的製法と工業的製法ってなんで2つも覚えなきゃいけないの?」という疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。
でも、実はけっこう面白いんですよ。
「何を作るか」ではなく「どうやって作るか」という視点
アンモニアの合成を例にします。
実験室的製法:2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O + 2NH3
工業的製法:N2 + 3H2 → 2NH3 (ハーバー・ボッシュ法)
どうでしょうか。反応式だけを見ていてもまったく楽しくありませんよね。考え方を変えましょう。
想像してください。あなたはアンモニア売りです。アンモニアを売ってお金を稼いでいます。もはやアンモニアは臭い気体ではありません。お金そのものです。たくさん手に入れてたくさん売りたい。
さあ、アンモニアを作りましょう。どうやって作りたいですか。できるだけ「安く」「ムダなく」作りたいですよね。安く作って高く売るのがお金儲けの常套手段です。
安く作るためには原材料が安くないといけないです。また、ムダなく作るためにはアンモニア以外の「捨ててしまう化合物」を作りたくないです。
工業的製法の凄さ
さて、それでは化学式に戻りましょう。
実験室的製法:2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O + 2NH3
工業的製法:N2 + 3H2 → 2NH3
青字が原材料、赤字が「捨ててしまう化合物」です。
まずは原材料について見ていきます。
実験室的製法の原材料は「塩化アンモニウム」と「水酸化カルシウム」です。「塩化アンモニウム」と「水酸化カルシウム」ってどこで買えばいいんでしょうか。
と思ったら、なんとAmazonさんに売ってました(笑)
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塩化アンモニウムってベーキングパウダーの原料になるんですね。へー。
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両方とも思ったより安いですね。
しかし、工業的製法の原材料は「窒素」と「水素」です。両方とも「空気」に含まれています。つまり、工業的製法の原材料は「空気」から入手できるんです。こっちの方がずっと安い。
では、次は「捨ててしまう化合物」について考えます。
実験室的製法では「塩化カルシウム」と「水」を捨てなければなりません。しかも発生した「水」にアンモニアは溶けるため、せっかく作ったアンモニアを少し損失します。
しかし、工業的製法ではアンモニア以外の化合物がゼロです。 原材料をムダなく効率的に使えています。
アンモニア売りなら間違いなくハーバー・ボッシュ法で「安く」「ムダなく」作りたいですよね。このムダのなさが工業的製法の凄さです。
実験的製法の凄さ
工業的製法が凄いことはわかりました。それではなぜ実験室的製法も必要なのか。
それは、工業的製法はカンタンではないからです。
しっかり勉強されている方ならご存じだと思いますが、ハーバー・ボッシュ法ではルシャトリエの原理を応用して反応を進めるため、高い圧力をかけて反応させる必要があります。また、反応効率を上げるため高温に保たなければなりません。つまり、ハーバー・ボッシュ法で合成するには高圧かつ高温で反応させるための装置が必要なんです。
アンモニア売りのようなプロなら大量に合成するため、工場を作ればよいです。しかし、実験室でちょっとアンモニアを使いたいなと思った時はそうはいきません。
だから「お手軽に」用意できる方法があると便利なんです。それが実験室的製法です。固体どおしを混ぜ混ぜして熱するだけで作れます。さきほど見た通り入手もカンタンです。超お手軽ですね。
このお手軽さが実験室的製法の凄さです。
まとめ
ただの無味乾燥に思えた化学式も見方を変えればお金を効率よく生み出す方程式です。工業化学は社会にめちゃくちゃ役に立ってるんです。
ハーバー・ボッシュ法やアンモニアソーダ法などの工業的製法は
- 安く
- ムダなく
を意識してみてください。
実験室的製法は
- お手軽さ
を意識してみてください。
凄さを感じながら深く勉強すると楽しいし、覚えやすいですよ。